
投資会社パークシャー・ハサウェイを率い、オバマの賢人として知られるウォーレン・バフェットが永久保有銘柄に選んだ会社、コカ・コーラ。
そんな同社で12年にわたって社長を務めてきたドナルド・R・キーオ氏は、長年にわたる経験を集約しても、成功を保証できる法則や段階式の方法は、どんなことについてでも編み出せていないと言うが、逆にかなりの確率で負けることを保証する「失敗の法則」なら導き出せたそうだ。
企業経営における失敗の法則なので、経営者という立場で読むのがもっとも身につまされることは間違いないのだが、そうではないサラリーマン諸氏が読んでも、将来の為に、あるいは今の会社を見極める為に、学ぶべき点が多い1冊。
ちなみに、全てを満たすと失敗するのではなく、どれか1つでも当てはまるなら失敗への道を歩んでいるという超強力な「法則」なので、心して読むこと!
目次ですべての法則が分かるようになっているので、もったいぶらずに最初に紹介してしまうことにしよう。
1 リスクをとるのを止める
2 柔軟性をなくす
3 部下を遠ざける
4 自分は無謬だと考える
5 反則すれすれのところで戦う
6 考えるのに時間を使わない
7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
8 官僚組織を愛する
9 一貫性のないメッセージを送る
10 将来を恐れる
11 仕事への熱意、人生への熱意を失う
おっと、題名とは違って11の法則になっているのは、著者のキーオ氏が11番目を「ちょっとしたおまけ」としてつけ加えたからなのだが、その割には、こんな発言が。
本書であげた法則はどれも、一貫して頑固に守っていれば、事業でかならず失敗すると断言できるものばかりである。
第十一の法則はそのなかでもとくに重要だ。(p.210)
「おまけ」じゃなかったのかと(笑)
しかし、この法則は何も特別なものではなく、そりゃあ失敗するよねというのが正直な感想ではないだろうか。
それは、最初に「失敗の法則」として刷り込まれているからというわけではなく、特にこれまでにも経営書などを読んだことのある人であれば、そうした想いは強く感じるところだろう。
だが、この法則を「守って」いないと言い切れる経営者が果たしてどれだけいるだろうか。
実際に見てきた事例を思い返してみると、思い当たる節がいくつもいくつも出てくるわけで、もちろん「成功」している人はおらず、行き着くところまで行き着いた「失敗」の事例をあげることなら困らない。
僕は企業に勤めるサラリーマンであり、経営陣に参画しているわけでもない立場。
しかし、そんな立場にある僕も、陥らないように気をつけたい、陥っている経営陣には物申したいという視点から、特に気になったポイントを簡単に紹介しておこう。
法則3:部下を遠ざける
優れた指導者になりたいのであれば、部下を遠ざけて批判を受け付けないようにする誘惑に打ち勝つ方法を考えるべきだ。ボスの立場に立てば、この誘惑がきわめて強くなるのだから。(p.68)
経営者にまでならなくとも、中間管理職がこうなったら組織としては大きなダメージを受ける。
そして、多くの人が中間管理職にはなってしまうからこそ、しっかりと自覚しておきたい。
自分が上司に対して抱いた不満のはずなのに、自分も部下に抱かせてしまうことのなんと多いことか...と常に自戒したい。
法則4:自分は無謬だと考える
評判とイメージはカネでは買えない。だから、命をかけて守るべきだ。諺にもあるように、「巨額の富より高い評判を選べ」なのだ。(p.78)
法則5:反則すれすれのところで戦う
信頼は当時もいまも、どのような事業にも不可欠な基礎だ。技術は進歩し、経営とマーケティングの新しい流行はつぎつぎにあらわれるが、すべての事業は煎じ詰めれば信頼の問題なのだ。(p.86)
特に最近のビット経済の発達に伴い、「評判の経済」は何かと話題に上るテーマではあるけれど、昔から変わらず経営にとっての重大関心事だったのだ。
それが、ネットワーク化によって増幅され、より大きな影響が短期間で発生しやすくなったというだけであり、評判を失う行為を選択するということは、経営だけではなく、人生においても大きな失敗を招くもとであることは間違いない。
法則8:官僚組織を愛する
わたしはビジネスの世界に入って間もなく、そう驚くほどではない結論に達した。ビジネスとは要するに、既存の顧客にうまく奉仕し、新しい顧客を獲得することだという結論である。(p.146)
ピーター・ドラッカーは「企業の目的は、顧客の創造である」と言ったが、社内の手続き・調整ばかりを重視する官僚組織は、その目的を阻害する要因以外の何ものでもない。
この点に嫌気を感じているサラリーマンはかなり多く、そうだそうだと首を縦に振っているところかもしれない。
しかし、だとすればあなたの属する組織は間違いなく失敗に向かって進んでいるのであり、首を縦に振って満足しているだけではいられない。
法則11:仕事への熱意、人生への熱意を失う
仕事の場で自分の心のなかにある情熱を育てようとするとき、もっとも簡単な方法は、自分の周囲の世界のうち、以下の四つの面に神経を集中させることだ。顧客、ブランド、同僚、そして自分の夢である。(p.203)
何事を為すにも、熱意なくして成し遂げられるほど甘い時代ではない。
4つ並んだキーワードの中で、「同僚」に神経を集中させることで熱意を育てられるというところに、少し意外な感じがしたが、解説を読めば納得(是非、ご自身で本書に当たっていただきたい)。
多くの経営者・会社が、意識していなくとも、実は既に「失敗の法則」を実践しているケースは少なくない。
苦しいときには特に無意識のうちに陥りがちな「法則」もある。
だからこそ、本書を一読して、意識的に我が身を見つめ直すことが大切なのだと思う。
冒頭で紹介したウォーレン・バフェットは、本書(原書)を1,000部買い求めて、自社の株主総会で配布したそうだ。
バフェット氏と違ってお配りすることはできなくて申し訳ないけれど(笑)、今読んでおいて損はしない一冊としてお薦めできる一冊であり、是非お読みいただきたい。
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ビジネスで失敗する人の10の法則 山岡 洋一 日本経済新聞出版社 2009-04-21 by G-Tools |
2010年3月10日
taka@中小企業診断士(業務休止中)
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